<シャンバラの1シーン>





「兄さん、兄さん、兄さん……!」


一瞬、すべてが止まったかのよう った。

少年は諦めたかのように見えた。

そう、絶望が彼を、ほんの一瞬 が地獄のごとく苦しめたの 。

意図的かそうでないかはわからないが、ロイの腕に込められていた力が緩んだのを感じて、アルフォンスは我に返った。

早く両手を打ち合わせ、遠ざかる複葉機への橋を錬成する。

駆け渡った直後、すぐ後ろで控えめの爆発音が聞こえた。

ロイが橋を爆 させたの 。

アルフォンスは振り返った。

再び、離れていく。

金色の髪が、風になびいている。

ロイはハッとした。

二度と、本当にもうこれで最後なの 。

アルフォンスも気付く。

その瞬間、兄の心が垣間見えた気がした。

再び別の理由で、ロイの片眼が見開かれた。

アルフォンスは精一杯の笑顔だった、今にも、泣き出しそうなほどの、最高の笑顔だった。

背を向け、足下に転がっていた鎧に入りそのまま機内へ姿を消す。

それを見届け、心の中で最後の別れを言う。



雨が降ってきたが、空には太陽が輝いていた。

すぐに虹がかかる ろう。









2012/02


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