Welcome! For English speakers, please feel free to read using a browser translator.
Detailed info & Contact (Twitter) are at the bottom of the page.

※attention※ FemaleKIDO♀








<後ろの席の男子>



桜が散り、新しい季節と共に新学期が始まった。
 鬼道は、帝国学園高等部へ進学した。
 四月生まれは忙しい。新学期になったかと思えば、すぐに誕生日がやってくる。しかしそれは、クラス全員が親交を深めるのにちょうどいいきっかけでもあった。
 なので、鬼道はそのことに気付いてから、積極的に利用することにした。源田も同じ誕生日だと分かり、さらにイベントが盛り上がるようになって、この作戦は概ね上手くいっていると思う。
 中学からのエスカレーター組は、そのことを知っているため、隅でひそひそと作戦会議をしているのも、通りすがりに聞こえてしまうほどだ。廊下でも、校庭の端でも、図書室ですら。
「もうすぐ鬼道様と源田さんのお誕生日よ。準備はできまして?」
 女子生徒が三人ほど、声を潜めて話している。声だけで名前が分かる相手だ、鬼道は気付かれないよう、目当ての本を探した。
「もちろん、進めているけれど……私個人からの贈り物がどうしても決められないのよね。ハンカチと琥珀糖で迷っているのよ」
「あら、そんなの琥珀糖のほうが明らかによろしいんじゃなくて」
「……ただのハンカチじゃないに決まってるでしょ。ヒナペンギンのレースよ」
「まあっ……それはハンカチにしたくなるわね!」
「でも……わたくしが普段使いの品を贈るなんて気が引けるわ。お菓子なら消耗品になるでしょう」
「そこなのよね……でもそのハンカチ、とても魅力的だわ」
 本棚の裏にいる鬼道は、思わず微笑んだ。自分へのささやかな贈り物にそこまで真剣に悩んでくれるなんて、幸せなことだと思う。照れくさいけれど、嬉しくもある。
「そうだわ、鬼道様に選んでいただけばよろしんじゃなくて?」
「名案だわ……! さすがわたくしの友」
「お任せあそばせ」
 本が見つかったこともあり、鬼道は音を立てぬよう速やかに図書室を後にした。




当日。教室へ入ると、クラスメイトたちが挨拶をしてくるので、爽やかに返す。皆、ソワソワしているのが顔だけで分かる。抜け駆けは許されないという暗黙の了解があるため、皆、授業が終わるのを心待ちにしているのだ。
 いつになくむずがゆい空気の中、鬼道は自分の席へつく前、後ろに座っている男子を見た。
「おはよう、不動」
「はよ」
 タブレット画面から目だけを上げて、他の生徒が聞いていたら指摘しに来るようなぶっきらぼうな挨拶だが、彼の目元が少し優しくゆるむのを鬼道は知っている。それが自分だけに向けられた特別な笑みであることをうっかり願ってしまう自分を戒めながら、ゆっくりと椅子へ腰を下ろす。
 生徒証をセットし、タブレット端末へログインして授業の準備をしていると、肩のところへ後ろから何かが差し出された。
「ん」
「ん? なんだ……」
 皆から見えない窓側からそっと差し出されたそれを受け取る。
「やるよ。好きだろ、チョコ」
「あ、ああ……ありがとう」
 手のひらに乗せられる程度の手頃な大きさの紙袋は、某大手百貨店のロゴ入りだし、中身は菓子だと言うので、とりあえず礼を言っておいた。
 もしかして、今日が誕生日だということを、知っていたのだろうか。でなければ、急に贈り物をしてくるなんて、説明がつかない。
 チョコレートが好物だということは、皆が知っているし、自分がどこかで話しているのを聞いたのかもしれないが、それにしても。
 教師が入ってきて、鬼道は慌てて立ち上がった。
「きっ、起立! 礼っ」
 急に、全身が風船になったみたいで、この気持ちを抑える方法を知らない。
 後ろの奴に心の内を見透かされることだけは避けたいと思っているのに、上ずった声で何もかも露呈した気がする。
 最悪で最高の誕生日になりそうだ。その予感が的中したと悟ったのは、中身のチョコレートが手作りだと分かった時だった。


2026/04/14




戻る




Follow me on Twitter(𝕏)
INAZUMAELEVEN Fanfiction / Fudo Kido

Welcome! Please feel free to read using a browser translator.
Responsive Design / Mobile Friendly
©2011 Koibiya/Kasui Hiduki