成人済みばかり集まって無礼講、同窓会も兼ねたパーティーは酒が飲める歳になってから四回目。年末になるといつも、飲み屋ではなく誰かの家に集まる。必ず、半数以上が寝るまで飲むからだ。今年はそれが、鬼道の一人暮らし用のマンションだった。
 食べ物と酒と毛布や寝袋を持ち込んで、好き勝手に騒ぐのが嫌だろうと思っていたが、案外本人も楽しんでいたのでほっとした。
 宴が終わり、流行の曲を流し続けていたラジオも止めて、カラフルな豆球がチカチカと照らし出す室内は、消したばかりのロウソクの臭いがほんのりと。
 かつて共に戦った者も、今でも共に駆け続ける者も、同じ志を持つ仲間だ。こうしてイビキをかいて正体を失くしていたって、それは変わらない。
 眠そうな目の立向居が手伝おうとするのを、いいから寝ろと布団に向かわせた後、不動は部屋中に散乱した酒瓶をテーブルの上へ集める鬼道のところへ戻った。

「俺たち、いつもこんなことしているな」

 不動が戻ったのを気配で知った鬼道が、振り向かずに呟く。笑い声で返事をして、少し手を止めた。
手を伸ばせば届く距離。
 鬼道は最後の瓶をテーブルに乗せ、そのことに気がついた。思わず、振り向くなと叫びそうになった。

 刹那、時が止まったかのように。

 お互いに、見つめ合った。体中に微弱な電流が流れて、あふれたそれが相手のそれとぶつかり合い、見えない火花を散らす。
 いつもとは少し違った。いつもというのは大概、グラウンドの上で、仲間たちの血潮と観客の熱気を感じながら、主に確認の意味で、または激励を込めて視線を交わす。
 だけど今はそうじゃない。しかも、いつもと違うということを、お互いに自覚している。
 これは、ただ見つめ合っているだけだ。意味もなく見惚れて、甘い陶酔に浸る。だが、これ以上は踏み込まないとも、わかっている。生涯を貫くほど本気の出会いならば、こんな軽率な始まり方はしない。その可能性を感じ取ったことで、かえって燃え上がった感情を、ロウソクを素手で消すように抑えながら、奥歯を噛んで笑みをこらえた。

「……オヤスミ」
「……ああ」

 呆然とした声が一つずつ部屋に溶けて、赤と緑が混ざっていく。そっと離れて、鬼道は毛布にくるまってラグの上へ、不動は持参した寝袋へ、それぞれ収まる。
 次に見つめ合うときは永遠に来なければいいのにと思いながら、今か今かと待ち望んでいる自分がいる。電気を消して、色とりどりの光の魔法が解けた今も、まだ。あとどのくらい待つべきか、酔った頭であれこれ考えるのは得意じゃないが、気を抜いたらすぐにでも寝込みを襲撃しそうで、意識が深い闇に落ちていくまで、必要以上に余計なことを考え続けた。
 どこか遠くの空でシャンシャンとベルが鳴っていた。




 ☆happy christmas☆







2015/12

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