<なんだかんだ言って…>
「そんなやり方じゃ悦くない」
また始まった。
ウンザリしながら、不動はローションでびしょ濡れの手を止め、屈んでいた上体を起こした。
「もっと丁寧にやれ」
そう言う鬼道は余裕綽々といった表情で、ベッドに重ねた枕に凭れかかっている。
「うるせーな」
かれこれ三十分くらい経った気がするが、一向に理想の雰囲気にならない。手厳しいのは意図的だとわかっているが、いい加減に我慢の限界が近付いている。
「少しは黙ってろよ」
強く吸い付くようにキスをして、無理やり黙らせる。少しはお気に召したらしい、首の後ろを撫でられた。
作戦のうちのような気もする。それなら大成功だ、下半身はもう今にも暴れ出さんばかりに熱い。
「喘げと言ったり黙れと言ったり、混乱させて誤魔化そうというのか」
「そういうのがうるせーっての」
やや大げさな声が楽しげに聞こえて、不動は目を細める。なんだかんだ言っても、やはり。
「もうイイだろ? 早く挿れさせろよ」
「まだだ。クズ」
体ごと密着しようとしたら胸板を片足で押さえられ、動きが止まる。力ずくで足ごと押し倒そうとしても、さすが鍛え抜かれた凶器はなかなか曲がらない。
これ以上無理を通そうとすると、蹴り飛ばされて肋骨が折れるような事態になりかねない恐怖もある。
だがジリジリと昂ぶる欲望が、その恐怖をも喰らい尽くしていく。
「フッ……ゆっくりだぞ」
何秒だったのだろう、何十分にも感じた間を置いてやっと、不動を押さえつけていた足の力がゆるんだのと同時に、熟れて蕩けた蜜壺を探し当てる。
直後に得られた歓びは、計り知れない。
2017/03/04