練習の終了を告げるホイッスルが鳴り響き、グラウンドは静かになった。誇り高いチームのメンバーたちは互いに労い、意見を交わし、ベンチへ集まってくる。
「みんな、ご苦労」
ドリンクを用意したテーブルの脇に、若くして帝国学園総帥となった鬼道は立っている。ブルーグレーのロングジャケットにスラックスに身を包み、夏の空のような青いネクタイをきちんと締めて。サングラスに隠された表情は伺いづらいが、教え子たちの安定した成長ぶりに満足している様子のようだ。
いつもと違うのは、隣に佐久間コーチが居ないことだ。今日は学園の重要な用事に追われているらしい。
マネージャーを採用しない帝国では、控え選手たちが交代で雑用をこなす。コーチはいつも忙しくしている総帥の代わりに選手を指導する役割を果たしているが、今日は鬼道一人が帝国サッカー部に所属する16人の中学生男子の面倒を見ているのだった。
ドリンクを飲み終えたメンバーたちがリラックスムードに入っているが、何かがおかしい。やたらとテンションが上がって来ているようだ。よく見れば、少年たちの肌は淡く色づき、股間が主張し始めている。最初は気のせいかと思ったが、何か異常な空気が流れ始めていた。
「雅野」
「はいっ、何でしょうか」
「いや……大丈夫か?」
「絶好調です!」
雅野の態度はいつもと変わらず、グローブを外している最中で、だがその動作はどこかぎこちない。緊張や焦りで外しにくいというよりは、意識が別の方へ向いていて疎かになっているときのような、病的とも言える怠惰の混じった動作である。
「もう、暑くって……シャワー浴びてきます」
「……そうだな、それがいい。御門」
キャプテンの御門へ近付くと、彼は少し体をそむけた。
「は、はい」
「お前は大丈夫か?」
「はい、あの……」
三年生の御門は、成人である鬼道と同じくらい、いやもしかしたらそれよりもしっかりした、脱ぐと思わず見惚れてしまう程の体つきをしている。今はその雄壮な筋肉を火照らせ、汗をかき、しかし他のメンバーと違って彼はそれを自覚しているようだった。
「大丈夫と言うか……その……」
鬼道は彼の澄んだ目が、熱に浮かされた病人のようにとろんとしているのを見た。目が合った瞬間、鋭い勘が働き、鬼道は青ざめた。これは今すぐに、逃げなければ。
その予感は的中し、御門はそのまま一歩進め、鬼道に近付く。身をかわして逃げようとしたが、後ろにいた蒲田、佐々鬼、五木、大滝の四人に捕まってしまった。
「お、お前たち……何を考えている!」
いつの間にか目の前に来た雅野が、鬼道を見上げうっとりと手を握った。
「鬼道さんのことしか考えてません」
その目は恍惚に燃え、我を失っている。本能だけが彼らを動かしているようだ。
「鬼道さん……!」
一斉に手が伸びる。上着を脱がされ、ネクタイをほどかれ、鬼道は慌てた。
「な、何をする……っ」
抵抗するが、それは彼らを傷つけまいとしながらのかわいらしいものだ。あっという間に靴下まで脱がされ、十六人の少年の前で鬼道は肌を晒しうずくまった。サングラスと服は大切そうにベンチに置かれる。ここで女のように悲鳴を上げるだけなんてことは彼のプライドが許さず、鬼道はくっと顎を上げた。
少年たちの前には、彼らが尊い思春期の全てで出来た敬愛を捧げる、幼い頃から積み重ねられた勝利によって鍛えあげられた精神と肉体がある。しなやかな腰と適度な弾力を持つ腹筋、厚すぎない胸筋の上に小さな突起が飾られ、引き締まった尻から伝説の一端を担った逞しい腿が伸びている。少年たちは口々に感嘆の声を漏らした。
「すげー……俺も大人になったら、こんなふうにカッコよくなれますか?」
「きれいだなあ……」
「やべえ……」
いくつも手が伸びてきて、脇腹から腰を撫でられ、ぞくぞくと感じるのを必死に耐える。
逃げようとしても四方を十六人に囲まれていて、腕が常に絡みつき、とても抜け出せそうにない。無理矢理なぎ倒せば多勢に無勢でもどうにかできるかもしれないが、暴力は使えない。
「鬼道さん……っ」
両脇から二人が寄り添い、胸の飾りを興味津々といった様子でそっと撫で始めた。
もう一人が目の前でズボンとスパッツを脱ぎ始めた。むき出しの若い性器が膨れ上がり、興奮に脈打っているのが見え、一度は目をそむけたが二度目は凝視してしまう。それを知って、目の前の一人――龍崎が微笑んだ。
「どうすか? 俺の……大人に負けてないだろ」
「あ、ああ……」
思わず力を抜きそうになってしまう。感情に流されてはいけないと思いつつ、鬼道は激しくなる呼吸を抑えられないでいた。中学生の頃から性を教えこまれた敏感な体は、今もなおより強い快楽を求めてさまよっている。
この異常な状況を何とかしなければと、思考をやめようとする脳を必死に動かそうとしていると、誰かが尻を撫で始め、手を取ってうつ伏せにさせられた。
「まず、ほぐしますよ……」
「おい、中を傷つけるなよ……」
「分かってる……」
ちゃんと爪を切ってある。つぼんだちいさな襞を押し割って異物が侵入してくる感覚に、鬼道は震えた。
「やっ、やめろっ……ぅあ……っ」
自分ではどこをどう触るか全て脳が指示しているため、これほどの快感は得られない。感じている自分を大勢に見られていることで、羞恥心が山火事のように燃え上がる。
「すごい……指がどんどん入る」
「俺にもやらせて」
「すっげ……」
人工芝に伏せ、声を押し殺す。まだだ、まだ耐えられる。
「もういいかな?」
「鬼道さん、もう入れていいですか?」
一瞬ぼんやりしかけた意識が引き戻され、鬼道は彼らを引き離した。
「だ、ダメだ! よせ……っ!」
何とか起き上がるが、それはそれで良くなかった。下半身をさらけ出した教え子たちを目にして、改めて状況を思い知る羽目になったからだ。自分を囲んでいる若々しい性器は大小どれも可愛らしく思え、全てが自分を求め、期待していた。思わず、生唾を呑み込む。
「いいか、お前たち……順番に、手でしてやるから……いいな?」
「本当ですか」
「やった」
歓声が上がり、鬼道は密かにため息を吐いた。並ぶ少年たちの真ん中に座り、両腕を上げて彼らの性器を優しく掴む。
「あっ! ……うぁあ……っ」
「あぁ、きどうさん……っ!!」
数回しごいただけで、濃厚な純白の精が吐出された。初めてだったかもしれない。体にかかるのも気にせず、次の性器へ手を伸ばす。ルーティン・ワークだと思えば、こんなことは容易く済むような気がしたが、鬼道は己を過信していた。
「俺、もう我慢できない……掛けたいですっ」
「僕も……!」
まだ済んでいない者たちが、自分でしごき始めた。次々と射精され、白濁液で体中ドロドロになってしまう。
「あぁっ……や、やめろっ……」
顔に掛かったものを指で拭うと、雄の臭いが鼻についた。先程から下半身が疼き出しているのを無視してきたが、もはやいつまで耐えられるか分からない。
「汚しちゃってすみません、ちゃんと使いますから」
御門は少し知識があるらしく、背中に流れた精液をぬぐい取って尻に塗りつけ始めた。
「よせ……! んッ……ふ……」
「鬼道さん、気持ちいいですか?」
さっきよりも滑りが良くなって、快感が増す。内側は潤滑剤さえあれば何でも受け入れられるほど柔軟で、期待にヒクついていた。思わず龍崎の腰にすがりついて、彼の性器を求めるような格好になってしまう。
「はは……俺の、舐めたいんですか?」
否定しようと開いた口に、熱い性器が突っ込まれた。
「んふ……っ!」
傷つけてはいけないと歯を引いて、吐き出そうとするが舌を絡めたようになってしまい、龍崎の熱と太さが増す。溜まっているものを吐き出させれば自然とやめるだろう、そう考えて舌と首を動かし始めたが、これは安直な考えだったことにまだ気付かないでいた。
「うんん……っ、すげえ気持ちいい……っ!」
確かに、龍崎はすぐ吐き出した。だが、その勢いは衰えない。あのドリンクに、いかがわしい強壮剤でも入っていたのだろう。思い当たる原因は、それしか考えられない。いつもは佐久間に用意させていたのを、今日は自分で用意し、少々管理が甘かったことは認めよう。だが、一体誰が入れた?
荒い息遣いと卑猥な水音だけが響く中、誰かが言った。
「じゃあ、キャプテンから」
「鬼道さん、失礼します……!」
御門が腰を抱え、性器をあてがう。
「はっ……御門、待て……っ!」
ぐっと、猛々しい熱が挿入ってくる。制止の声は途絶え、喉の奥へ落ちていった。
「ああ、鬼道さんっ……!!」
「ふぁっ……ふぅうっ……」
待ち望んだ強烈な快感に脳天まで貫かれ、鬼道は最後の理性を危うく手放しかけた。だが、まだ意識はある。このまま屈してはならないと叫ぶ理性が、まだわずかに残っている。
「あ……ぁっ、すごい……さすが鬼道さんだ……! めちゃくちゃ気持ちいいです……ッ!!」
「んぅうッ……あぁ……っ!」
御門は徐々に律動を速め、それを見ている者たちは自慰を始める。
「ううううっっ!!」
「ぅぁ……っ」
中に吐き出された感覚に青ざめながら、何か注意を伝えたくとも口から出る声は言葉にならない。
「ぁ……っ」
「次は俺です」
御門と同じくらいがたいの良い三年生の蒲田が腰をつかむ。
「鬼道さん、まだイッてないですよね? つらくないですか?」
雅野が手を伸ばし、すっかり硬くなっていた鬼道の性器をそっと握った。
「それは……放せ、雅野……ッ」
蒲田の太い男根が、精液でドロドロになった菊門を貫く。
「うぉぉお……ッたまんねェェ……!!」
「ひぁっ……あ、くゥ……ッッ!!!」
雅野の手に促され、挿入された時に駆け抜ける快感に、とうとう屈してしまった。見ていた雅野が、嬉しそうな声を上げる。
「あ、鬼道さん……やっとイッてくれましたね。嬉しいなあ……」
「天才ゲームメーカーって、同時にどのくらいを相手にできるんですか?」
「ちょっとやって見せてください、鬼道さん」
蒲田が激しく腰を打ち付け、内壁に精液が叩きつけられるのを感じながら、鬼道は中学生の好奇心旺盛な質問を聞いていた。
「は……あ、あぁっ……」
涙で視界が滲む。だがこれは感情ではなく、生理的にもよおした、強すぎる快感によってあふれた涙だ。
「鬼道さん、最高です」
誰よりも先を見通す力を持ち、フィールドの動きを全て把握することのできる鋭い眼は、今や虚ろな無地の赤に色づくのみ。両手に熱い肉棒を握り、もう一本を口に含み、蜜壺は入れ代わり立ち代わり欲望を受け入れる。鬼道は強く息を吐く合間に、うすく微笑んだ。
つづくわけないでしょう