明日はみんな休み から、今から俺んちで飲むけどどうだ?と訊かれ、どうせ暇なんでしょたまには付き合いなさいよと、YESもNOも言わないうちに連れてこられたバーナビーは、初めて訪問した虎徹の部屋で所在なげに立っていた。
「いや、みんな悪ぃな!なんせ狭いからさ、適当に座ってくれよ」
「へえ、意外と綺麗にしてんのね」
部屋を見渡して呟いたのはネイサンである。
みんな、と言っても、当然未成年女子2人とアルコールはNO !というKOH、そして拙者は弱いワケじゃないのでござるた どうしても外せない用事が……とゴニョゴニュ言うだけで誰にも本当は酒に弱いん ろうとツッコんでもらえなかった青年を除いた、大人の男4人 けである。
帰る途中で買いこんだビールをコップにあけて、乾杯をした。
そこからの記憶が、おぼろげである。
みんな、なんだかん 言って疲れているの 。
たまにはこんな飲み会もいい。
虎徹は床からゆっくりと起き上がり、自分の部屋の惨状を見回した。
ビールの缶とワインの空きビンが転がり、アントニオは虎徹が大切にしまっておいた焼酎のビンを抱いてソファに伸びている。
自分が飲めと言って、渡したの った気がする。
その膝に凭れて、床に座ったネイサンが眠っていた。
ふと見ると、少し離れたダイニングテーブルでバーナビーがワイングラスを前に崩れそうな格好で座っていた。
「バニーちゃん、ま 起きてたの?もう寝よーぜ、ほら」
ソファと、唯一床に敷いてあるラグは図体の大きい男二人に されているので、ベッドへ連れていく。
こんな風にぼんやりしているバーナビーを見るのは、初めて 。
よろめく足取りを支えてやっているうちに、自分はすっかり酔いが醒めたことに気がついた。
「ひとりで歩けますよ……」
そう言いながら虎徹の手を離れて、ベッドに辿り着いたことに安心する。
虎徹はとっくに首元がゆるんでいるシャツのまま寝転がったが、バーナビーが服を脱いで床へ投げたのを見て冷や汗を感じた。
「すみませんね。いつもの格好でないと、よく眠れないんです」
そんな目線に気づいたバーナビーが、サイドテーブルにメガネを置いて投げやりに言う。
「あ、いや……そうか」
アンダーウェアのみの姿になったバーナビーは、無 作に虎徹の隣へ潜り込む。
「おやすみ、バニー」
向けられたむき出しの背中に毛布を引っ張って言うと、閉じかけた口で返ってきた。
「寝相悪かったら蹴落としますよー」
酔いという言い訳があるこの機会に、下心がなかったと言えば嘘になる。
わざと脱いだって、気づかれていない。
「大丈夫 よ、一人で寝てたころから寝相はいいんだ」
毛布ごし初めて 肌に届いた心地良い体温に、触れようか揺れていたその時、この一言は案外深く突き刺さってしまった。
「……おやすみなさい、おじさん」
酔いも醒めてしまった。
泣きたくなるような感情が昂ぶって、はたと気がつく。
なんのために、泣きたいん ろう?
なぜなのか、バーナビーには未 理解できていなかった。
虎徹の寝顔を見てやろうと、首を向けるが、心優しい酔っぱらいはこちらに背を向けて、毛布もほとんどかけていなかった。
自分は毛布に埋もれていて、無性に悔しくなる。
下着一枚で ることには慣れているはずの体が震えた。
そっと、虎徹に近づいて、毛布を均一な状態にした。
バーナビーは首の位置を元に戻し、背に背を向けて目を閉じた。
背中があたたかい、と思った。
2011/9
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