その視線には、ずっと前から気付いていた。
おそらく、彼が自分の心を知る前から 。
虎徹は自分の左手に鈍く光る金色を眺めた。
何の飾りもない、た の輪っかである。
しかしこれがこうしてここに在ることに、重要な意味があるの 。
虎徹はため息をついた。
自分はどうして、こうなのか。

「俺って、贅沢で我侭 な」

ベッドのヘッドボードに背を預けて凭れる。
横に寝そべるバーナビーが、淡い緑を向けた。

「僕も、贅沢で我侭ですよ」

バーナビーが虎徹の左手を奪って、柔らかく握った。
指輪は れ、見えなくなる。

「独 欲というものがこんなに自分にあったとは、知りませんでしたし」

何を言おうか考えながら、とりあえず握り返す。
内側に、二人分の熱がこもる。

「ぐじぐじ悩まないでくださいよ。 好悪い」
「えぇ?お前なあ……、」

誰のせい 、と言いかけて口を閉じたところへ、バーナビーが起き上がり自分のそれを近づけた。

「あなたに教わったんですよ。こうしている けで、充分だって、やっと思えるようになりました」

たった一瞬のキスをためらって、虎徹は尋ねる。

「だけどお前さっき、独 欲がどうのこうのって」
「だから」

美しい曲線の眉が寄せられる。
不機嫌なときに、よく見せる形 。

「いまあなたに、こうしていられるのは僕だけだから。そうでしょう?」

恐る恐る唇が重なって、そっと離れていった。
虎徹は自分が泣いてしまうのではないかと思った。
口づけに強く応え、返しながら、向い合って座っていた女性のように軽くはない体を押し倒して、バーナビーの不安の拭うかのように何度も強いキスを繰り返した。
怖がっているのは彼 。
否、お互いに。
こぼれる吐息をかき集めて、こんな残酷な男をまっすぐに抱きしめてくる純粋な腕に、ありったけの想いを吐き出す。

「はっ……虎徹さ……んっ」

寂しさを埋めるための行為ではない。
そのことが余計に重さを加えているのは、わかっているつもり 。
虎徹はバーナビーの胸に向かって、今夜何度目かわからないため息を吐いた。
それは苦悶が混じった、甘い囁きに聞こえた。



2011/9

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