<鬼百合は盗まれる>





その日は朝から眠かった。
というのは言い訳にしかならないのだが、高校に入ってからというもの、部活は引っ張りだこだしある程度の勉強もしなくてはいけないしで、寝るのは1時2時というのが当たり前になりつつあった。その隙間を縫って不動と会っているのだから、自分でも大したものだと思う。
そもそも去年から精神状態がおかしいんじゃないかと思い始めていた。花火の夜といい伊豆での五日間といい、不動との関係が徐々に変化してきているのが分かる。そしてそれに伴い自分の心も変化しているのを感じていた。
主に、起伏が激しくなった。不動に会っている時は浮わついて落ち着かず、会っていない時は平淡で退屈な気分になる。思春期は感情の起伏が激しくなりやすいとは言うが、よりによってその中心軸が不動ということに苛立ちを覚える。
何だってあんな奴――多少顔が良くても最下層の人間には変わりない何の存在意義も無いクズ――に振り回されなければならないのだ。
誰に会っても嫌な態度で当たってしまうような気がして、今日は人通りの少ない住宅街を抜けて行った。学校まで遠回りなため、帝国学園だけでなく他校の学生はおろか駅に向かう通勤者もほとんどいない。
たまに通る道だからと思って甘く見ていたのが間違いだった。
「!? うっ……」
思考に没頭していることに疲れてきて、背後に気配を感じた時には既に遅く、鬼道は強烈な薬の臭いを最後の記憶に残して意識を失った。


+++


HRを告げる鐘が鳴り、不動は欠伸をしつつ着席する。斜め前の席は先程からずっと空だ。彼女の人生で初めてではないかと思われる遅刻を茶化すメールを送ったが、レスポンスは何一つない。いつもならくだらないメールも無視できない性格から、何かしら罵倒の言葉が返ってくるのにだ。とうとう愛想を尽かされたかと思ったが、そういえば最初から愛想なんてないと思い直した。
非生産的な行為のために本心を閉ざすことが、こんなに辛いとは思わなかった。心なんて、父親が莫大な借金を負い家庭が崩れた時に、捨てたものと思っていたのに。
それにしても鬼道は現れない。HRが終了し、一限目の授業も居眠りすらできず、焦燥が高まる。もしや彼女の身に何かあったのではなかろうか?
教室を移動する際に気付かれないよう抜け出し、まずは職員室へ情報収集に向かったが、早く教室へ戻れとしか言われなくて腹が立った。ゴミ箱に八つ当たりしなかったのは褒めてもらいたい。
廊下を歩きながら鬼道の携帯に電話してみたがコール音が続くだけで、一度ならまだしも五分おきにかけて三回とも出なかった。まだ「電源が入っていないか、電波が――」の方がマシだ。遅刻をからかったメールのせいで無視している可能性もあるが、一体どこにいるのか、こうなれば自宅に電話するしかない。
授業中のおかげで誰もいない下駄箱の横で携帯電話からかけると、上品な若い女性の声が丁寧に応答した。
「あ、あの。鬼道……有奈さんはいらっしゃいますか? 僕はクラスメイトなんですが」
自分は何をやっているんだと思うようなよそ行き声で訊ねるが、電話口の女性に逆に質問で返されてしまった。
『いつもの通り出発されましたから、この時間ですと学校に……まさか、ご登校なされていらっしゃらないのですか?』
姉妹の存在は聞いていないし、母親でもなさそうなので、召し使いなのだろう。不動は改めて深呼吸する。
「あ、ハイ……具合でも悪いのかなと思って電話したんですが……」
『まあ。もしかしたら途中で具合が悪くなられて、休んでおられるのかもしれませんね。今朝はいつもとお変わりないご様子でしたのに……直ちにお探しします。ご連絡ありがとうございます、お名前を教えていただけますでしょうか?』
「えっあ、イヤ、僕は大丈夫です」
咄嗟に切ろうとしたが、考え直した。ここで名乗っておくメリットが無いわけではない。
『後でお嬢様にお伝えしますので』
「さ、佐久間です。僕も何か手伝えることがあったら、電話ください。番号は――」
『畏まりました。何か分かりましたらご連絡致しますね。いつも有奈様のことを気にかけてくださりありがとうございます、それでは失礼致します』
「!?」
最後の言葉はどういう意味なのか聞く前に、電話は切れてしまった。
「ばれてんじゃねーか……」
公然と付き合っていると言ってもいいのだが特に言いふらしたりはしていなかったし友達などの前でバカみたいにいちゃつく必要は無かったので、第三者に関係を仄めかされるのは初めてのことだった。三年も経てばいい加減メイドなら気づくのかもしれないが、さすがは鬼道家のメイド、鋭い観察力が備わっているのだろう。気恥ずかしい思いを抱えたまま、とりあえず教室へ戻った。


+++


気がつくと暗くて狭い場所にいた。しかも、暑くて息苦しい。幸い口は自由だったが、手足はガムテープで拘束されていた。
背中で括られているところを見ると素人ではなさそうだが、不動の悪い冗談という可能性も捨てきれない。
耳を澄ますと、エンジン音が止まり重々しい音がした。話し声もするが、何を話しているかは分からない。
ここは乗用車のトランクだと思い至った時、それが開けられて光と酸素が入ってきた。
「あっおい、起きてるぞ」
「どうする?」
大学生くらいの若い平凡そうな男が二人、驚いた様子でトランクの中を見る。鬼道は横たわったまま無言で睨み付けた。手馴れているらしく、何度も同じ手口を使っているのだろう。この機に、自分で終わりにしなければ。
「運ばねぇと」
「あ、ああ。お前そっち持て」
腕が伸びてきて体を掴む。暴れたが、思うように体が動かない。まだ意識が朦朧としていて、睨み付けたのもただ薄目を開けて見ただけに過ぎないと気付いた。
肩と膝を持って、男たちは鬼道を運んでいく。周りは港のような倉庫が立ち並んでいる。スカートがひらひらと風にそよいだ。
「そうそう、大人しくしててくれよ、お嬢さん」
「おい、持ち物を調べろ。家の番号が要る」
「よし、じゃお前ちょっと見てろ」
一人が車へ引き返すと、もう一人は鬼道を倉庫内の冷たいコンクリートに転がしたまま、コーラの缶を開けた。
「……どうする、つもりだ?」
恐る恐る口を開くと、男は少し驚いた様子だった。
「おお、やけに落ち着いてんなぁ? こういうの慣れてんのか?」
誘拐という意味なら初めてだが、軽い緊縛プレイという意味なら初めてではない。しかし今は遊んでいる場合ではない。
無視していると、相棒が鞄を持って戻ってきた。コーラと引き換えに受け取り、倉庫にいた男が中を調べ始める。
「さーて、お名前はぁ? 鬼道有奈ちゃん、と」
「エッ、まさかあの鬼道?」
ヒューッと口笛を吹いて、相棒がコーラを開ける。彼は安っぽい金髪で、もう一人は茶髪のセミロングだった。いかにも外道という雰囲気が漂っていて、相手をするのも馬鹿馬鹿しい。フンと鼻を鳴らして鬼道は言う。
「とっとと身代金を要求したらどうだ。お父様の携帯番号なら電話帳に入っているし、口頭で教えてやってもいい」
落ち着いていると先程ロン毛のほうに言われたが、全身に力が入っていてみぞおちが苦しい。深呼吸を意識したくても、緊張で真っ青になっているのが自分でも分かった。
「なんだぁ。度胸あるな」
「さすが、鬼道家のお嬢さんは違うぜ」
金髪がロン毛の耳元で手を当てて言う。
「スッゲー美人だしなぁ」
下品な笑い方をされチラチラと視線を受けて、恐怖と嫌悪を感じた。
「やべェな」
一瞬たりとも隙を見せるまいと鬼道が睨んでいる横で、男たちは鬼道の携帯から家に電話をかける。きちんとボイスチェンジャーを使っているところを見ると、やはり相当手馴れているのだろう。
父はどこかの社長とゴルフに出掛けているため、電話には村前が出ているはずだ。後でどうやって謝ろうか考えることで、少し恐怖が和らいだ。


+++


電話が来たのは約一時間後だった。教室に入るなり出ていく不動を気に留める者はいない。
『佐久間さん、大変なことになりました。お嬢様は具合が悪いわけではなく――ああ、お怪我をされていたらどうしましょう――今はどこにいるのか全く不明でございます。警察に連絡したらお嬢様が――でもやはり密かに連絡するべきでしょうか、旦那様は本部長さんと面識がありますし――』
「おい、ちょっと落ち着け――落ち着いてください」
メイドのあまりのパニックぶりに、つい演技も忘れて叫びかけてしまったのを慌てて直す。それにしても、嫌な単語をいくつも聞いた。まさか想定していた一番最悪な状況なのだろうか。
『はっ、そうですね。私がしっかりしなければっ』
「拉致られ――誘拐された、とか言わないでくださいよ」
『ううっそのまさかでございます!』
気丈に取り直したと思ったメイドは、泣き崩れんばかりに叫んだ。
嫌な予感が的中して、焦燥と憤慨が高まる。
「どうなってるのか、説明してください」
どうやら犯人から鬼道の携帯によって父親に電話があり、身代金一億円を指定の場所まで届けろという要求があったらしい。父親はメイドに連絡した後ゴルフ場から自宅に向かっている最中で、娘の命と引き換えならそんな端金さっさと用意しろと出資先の銀行頭取に怒鳴りつけたところのようだ。
「鬼道ちゃんが一億円ねぇ……」
確かにそれだけあれば随分やりたい放題できるだろうが、命云々の前に彼女の値段とすると疑問が沸いてくる。
『とにかく早くお嬢様を安全な場所にお連れしなければ……こ、この村前、やはり一日中お側を離れることのないよう全身全霊を尽くさねばなりませんでしたのに……申し訳ございません!』
「いや……あの、僕に謝られても」
常日頃から息苦しいと言ってボディガードを付けないから悪いのだが、合気道を習い抜群の運動神経で痴漢の手をひねったり他人のひったくりを捕まえたこともある鬼道が、あっさり誘拐されるとは。
そうだ、彼女なら今ごろ堂々として、とっとと金をもらえと犯人たちを睨んでいるに違いない。
「いつどこへ金を持ってこいって言われたんですか?」
不安を拭いきれず、不動は必死で頭を働かせた。メイドの声が余計に不安を助長するが、彼女のことを考え奮い立たせる。ある種の責任感と思春期のプライドが混ざり合い、何でもしてやろうじゃないかという気になっていた。


+++


男二人は電話を終え、ニヤニヤしている。
「よしよし、話が分かる金持ちはいいな」
「なあ、あの鬼道家だぜ。一億じゃ少なかったんじゃね?」
「馬鹿言え、それ以上もらったって隠しきれないだけだろ」
不満そうな金髪が、物欲しそうに鬼道を見た。その目線に本能的な危険を感じ取り、思わず冷や汗がふき出すが表情に出ないよう奥歯を噛み締める。
「じゃ、俺は金取ってくるから。お前はここでしっかりお留守番してろよ」
「はいよ。今日は寿司だな」
「特上のヤツな」
ロン毛が車に乗り込む。銃を持っているのが見えた。
「ヘマすんじゃねーぞー!」
「お前もつまみ食いすんじゃねーぞ!」
去って行く車を見送り、金髪は振り向いて鬼道を見る。
「つっても、無理があるよな」
側にしゃがみ、顔にかかっていた髪をがさついた手つきで肩の後ろへ避けた。
「触るな外道」
「威勢がいい女ほどそそられるのは、男の力を示したいからだって、どっかのエラい精神科のセンセイが言ってたなぁ」
顎を掴まれ、身じろぎするが、金髪はケタケタ笑っただけだった。
「安心しな、まだ何もしねぇよ。あいつと相談してあんたをどうするか決めっからよ」
「お金を受け取ったら私に用は無いだろう」
「それはどうかな?」
まずいと思ったが、敢えて目を逸らさずにおいた。潮風が肌を滑っていき、気持ちが悪い。奴が見ていない隙に手足をふんばってみたが、何重にも巻かれた強力タイプのガムテープはびくともしない。乾いた唇を舐め、今ごろ学校はどうなっているか、不動は何をしているか考えようとしたが、つらくなりそうだったのでやめた。こういう時は、日本史の年表暗誦が一番だ。


+++


昼過ぎの国立公園はいつも通り広々として、人々が適度に行き交う。
背景に溶け込む私服姿で鬼道家のメイドとは分からないであろう一人の女性が、黒いアタッシュケースと共にベンチに座り、携帯電話で話している。
「着きました」
『よし。警察に電話したりバカな真似はしてないな? ベンチの下に金を置いて、そっと立ち去れ』
「お嬢様の安否が先です!」
『手ぇ離さないと、その大事なお嬢様がどうなるか知ったこっちゃないぜ?』
「くっ……」
やはりか、と事前に渡されたイヤホンで歩道から傍聴していた不動は顔をしかめる。メイドはそろそろとアタッシュケースから手を離した。
『さすがお利口なメイドさんだ。そのまま下がれ、振り返らないで家に戻るんだ』
「お嬢様を解放してください!」
『金が無事に手に入ればな』
「約束が違います……!」
『うるさい! お嬢様を傷つけられたくなかったら、とっとと帰れ!』
ビク、と彼女の肩が震える。終焉を聞かされたかのようにもつれる足で車へ向かうメイドを見送り、不動はアタッシュケースに目線を戻す。
野球帽を被りサングラスをかけた地味な男が一人現れ、さりげなくアタッシュケースを持って行った。近くに路駐していた白いセダンに乗り込み、すぐに去って行く。
確信を強め、不動はペダルを漕ぎ出した。しかしスピードを出していて、左折したりすれば距離が縮まるが、どうしてもすぐに離されてしまう。
かといって追い付けるように全速力で漕げば目立ち、尾行に気付かれてしまうだろう。必死に頭を働かせる。
「この先は……倉庫街だ」
もし自分が犯人だったなら、人気の無い倉庫に相棒と人質を残しておいて、一人で金を取りに行くだろう。
港の倉庫街と言えば取引場の代名詞のようなものだ。不動は、全速力で漕ぎ始めた。


+++


車のエンジン音がして、ロン毛が倉庫の外へ出て行った。今のうちに立ち上がり、向こうにぶら下がっている大きな貨物用フックで手首のガムテープを切れれば逃げることができそうだ。
「どうだ?」
「バッチリ。見ろよ」
男たちが金に夢中になっている隙に、注意深く立ち上がり、フックのところまで一歩ずつ跳んで行く。
「じゃ、ズラかろうぜ」
「お嬢サマはどうすんだよ?」
思わず耳を澄ました。返答の代わりに、男たちは下卑た笑いを重ねる。
「おい! 何やってんだ!」
「……っ!」
急いで切ろうとしたあまり滑ってフックが手首の皮膚を裂いたが、同時にガムテープも裂くことができた。
「なめてんじゃねえぞ!」
「離せっ!!」
解放を優先した為に逃亡の確率は下がってしまったが、再び捕まる前に足も自由にすることができた。
両手が自由になったとはいえ、二対一では分が悪い。まず一人を捻り倒し、それに驚いたもうひとりを何とかして倒すことができれば逃げられるが、それには完璧な隙を突かなければいけない。
大人しく両腕を掴まれている鬼道に、ガムテープを新しく巻き直そうと近づいた金髪が、何か頭に激しい衝撃を受けて倒れた。
「なっ……どうした!?」
視界の端で、テンテンとサッカーボールが転がっていく。
驚いたロン毛に小手返しを使って倒し、すかさず背中で捻った手首を押さえつける。
「痛ぇぇっ! ふざけんな、このアマ……」
「ふざけてんのはてめぇだろ! このクソ野郎ッ!」
倒れた拍子に銃が放り出され、掴もうと伸ばしたロン毛より先に走ってきた不動が取り上げた。
「動くんじゃねぇ。今すぐブッ殺してやってもいいんだぜ」
安全装置を外す音がして、ロン毛は押さえつけられたまま両手を上げた。
「わ、悪かった……悪かった! だから、頼む、ソレを退けてくれよぉ……っ」
「何寝ぼけた事言ってんだよ。てめえみてぇなクソにもなれねぇ野郎はつまらねぇム所でまずいメシ食っておっ死んでろ」
言い終わるか終わらないか銃の握りで後頭部を強打し、不動はノビた二人をガムテープで縛った。その間、鬼道はやっと体の力を抜くことができた。
ゆっくりとコンクリートに座り、不動が銃から弾丸を抜いて放り投げるのを眺めていた。携帯で電話をかけ警察を呼んだ後、ようやく鬼道を見る。
ゆっくりと向かってくる姿に、涙が込み上げてくる。堪えなければと焦る自分もいたが、それよりも安堵と喜びが勝って、不可抗力を言い訳にするしかなかった。



囚われのお嬢様は思ったより丈夫にしていた。先ほどの小手返しは的確で強かった。そもそもこんな下衆に捕まったくらいで、弱るような玉ではない。
「遅いぞ! 何をやっていたんだ」
「はぁ? それが助けてもらった時の台詞かよ?」
意思が通じ顔を見た途端、鬼道は両腕を伸ばし、隣にしゃがんだ不動を捕まえた。
「あ、おい……怪我してんじゃねぇか――」
ぎゅううとこもる腕の力に締め付けられ、言葉が消えていく。両腕で細い胴を抱き締め返した。
「もう、大丈夫だ」
耳元で低く呟くようにして出した声は、自分でも驚くほど優しかった。鬼道がはっとして、腕の力を少しゆるめる。
「お前が来るなんて思ってなかったし期待してもなかった」
泣くのを堪えているような声が耳の横で聞こえた。
「ああ、別にいいよ」
「あんな下種、お前が来なくたって……」
「わかったから」
「こんなのも、誰でもいいんだ。たまたまお前がそこにいるだけで、深い意味なんかない」
誤魔化すのも限界があるとさすがに溜め息が出た。足元で、気絶した男のどちらかが呻く。そろそろ警察が来るはずだ。
「ほら、ワケわかんねーことばっか言ってねぇでとっとと帰ろうぜ。立てるか?」
先に立ち上がって手を伸ばすが、鬼道は乱雑に袖で目元を拭ったあと、少しも動かない。
俯く鬼道に困って、再びしゃがんで腰と膝の裏を持ち上げる。
「掴まってろよ」
てっきり猛抵抗に遇うかと思ったのだが、大人しくしっかりと不動の肩に腕を回してくる鬼道に、愛しさが募る。
「疲れただけだ」
「はいはい」
「得意気だな。お前も単純な男の一人か」
「そんだけ元気がありゃ一人で歩けんだろ?」
下ろして立たせると、少しふらついたが持ち直した。パトカーのサイレンが近付いてくる。
「……ありがとう」
一段と煩くなったサイレンに掻き消されて聞こえなかったふりをした。ずっと隣にいるので、手を繋いでやった。
事情聴取が終わってやっと家に帰れたのは夜になってしまったが、取り返した分以上のものを得られた気がして、疲労も気にならずぐっすり眠ってしまった。






後編へ続く

2013/07
戻る
©2011 Koibiya/Kasui Hiduki