静かな朝。雨も上がり、部屋には太陽の光がさんさんと射し込んでいる。ユウが目を覚ますと、清潔なパジャマを着て、姉と二人でベッドに寝ていた。起き上がって体を伸ばす。腰が少し重いが、気分は悪くない。
 そう思い込もうとしているだけなのかもしれないが、ユウにとっては同じことだった。
 与えられた新しい服をベッドに広げる。ウエスタン風の花柄ブラウス、蝶や鎖や英文字がプリントされた白いTシャツ、ゆったりふわふわしたアイボリーの無地カットソー。特に何も考えず、カットソーに袖を通す。
 顔を洗って戻ってきた有奈が、ベッドに座ってユウを見た。その顔が朝の光にそぐわない色だったので、姉の気持ちを汲み取ったユウは悲しくなった。
「オッハヨー」
 何から言おうか、どんな言葉を掛ければいいか迷っていたその時、ドアが開いて兄弟が入ってきた。オレンジジュースが揺れるコップを二つ、アキはユウに渡した後、有奈に渡しに行く。
 手ぶらで来た明王はユウの全身をさっと見て、笑みを浮かべた。
「おっ、結構似合うじゃねェか?」
 びく、と思わず震えたユウの細い肩を撫でて、明王は床に敷いた布団の上に腰を下ろし、ユウをペットのように抱き込んだ。膝に座らせ、後ろから手を回して、カットソーをまくり上げる。ブラジャーの中に、冷たくも温かくもない骨張った手が入ってきて、ユウの体は強張る。
「お。おっぱい少しおっきくなった?」
「ひゃっ……や、めろ……」
 大きな手に両胸を掴まれ、ユウは慌てた。しかしやわやわともてあそぶように少し揉んだだけで、手は顎や髪へ動いていく。
「誰かさんと違ってユウちゃんは素直で可愛いよなー」
 明王はユウの頬を撫でながら、彼女の姉に視線を送る。有奈は顔をしかめ、睨み返した。これ以上、好き勝手にさせておけない。
 そんな様子を、苛立ったアキが見ていた。
「ねーねー、オレのことも可愛がってよ」
 甘えたようにすり寄って、抱きついてくるアキを受け止め、そのわざとらしさに有奈は困惑する。
「ん~っ、でっかいのもたまンねェー」
 まだパジャマ姿だった有奈の両胸を鷲掴みにして、アキは手からこぼれるほどの乳房を揺する。
「や、やめろ……っ」
 胸に顔を埋め、ボタンを外して、現れた滑らかな肌を舐める。アキを押し返そうとするが、胸を揉みしだかれながらでは、うまく力が入らない。
 以前はもっと抵抗できたはずだ。そう思いながら、アキに押し倒されるがままの有奈。
「んっ……」
「気持ちいいかァ? 兄貴より器用なんだぜ、オレ」
 抵抗が弱いのを良いことに、アキはパジャマのボタンをさらに外しながら、ズボンにも手を滑り込ませて愛撫する。
 そんなアキを見たユウは、心が曇るのを感じて俯いた。その耳元に、明王が優しい声でささやく。
「なぁユウちゃん、口でシてくれるくらいイイだろ?」
 頭を撫でられ、大人の男の声が鼓膜を犯す。もう逃げても無駄だと分かっていたし、姉も抵抗していないので、ユウは明王の要求に従った。
 股間に屈み込んで、ゆっくりとジッパーを下ろす。明王が手伝って自分で下着から取り出した男根は、まだ少しやわらかさが残っているようだ。慣れないが、思い切って口を開く。
「はむ……っんぅ、ふ……っ」
「そおそお、もっと下のほうもペロペロしてよ。ユウちゃん、口ちっちぇーなァ」
 まるで愛らしいペットに向けるような響きで、ユウの頭を撫でながら、明王は言う。
 有奈は妹に奉仕させて喜んでいる明王を見て、顔をしかめた。今までは、大切なユウを辱しめられているからだと思っていたが、何となく違う気がしてきている。別の理由があることを認めたくなくて、有奈は二人に背を向けた。
「あーっやわらけー」
 アキも、明王がユウを可愛がっていることに苛立っているらしい。いや、可愛がるのはいいが、ユウが満更でもなさそうだから苛立つのだ。
 有奈は少し体を起こし、八つ当たりのように胸に覆い被さっていたアキの股間をまさぐる。
「立派に一人前じゃないか……」
 既に存在を主張していて、窮屈そうに布地を推し拡げているところを撫でると、アキが堪らないといった様子で溜め息を漏らした。
「こんなになって……つらいだろう?」
 ジッパーを下ろすとアキの目が輝いた。
「マジ?」
 その股間へ顔を埋め、やんちゃなペニスを口に含む。
「っんふ……」
「ぉわっ、すっげえ……出血大サービスじゃん」
 アキは余裕を持とうと有奈の髪を弄んだりしていたが、柔らかい舌と唇に包まれ、そっと歯で挟まれたりして、我慢は長く続かなかった。
「んッ……やべ、イク……ッ!」
 口で愛撫しながら、袋の裏を指先でそっと撫でていると、アキはぶるるっと震えて射精した。白濁が有奈の口と、はだけた胸元に飛び散る。
「すげえな……」
 嬉しそうなアキは、にやにやとその姿を眺めた。有奈は顔と胸を拭って、手についた白濁をゆっくりと舐めとる。見れば、アキのペニスは再び首をもたげ始めている。
「そう、その調子その調子」
「んっふ……んぅ、むっ……」
 明王はまだユウの口を犯し続けている。そろそろ限界なのではと思ったら、やはり絶頂へ達した。
「いいか、出すぜっ……こぼすなよ?」
「……んむぅうっ……ぷはぁっ、」
 ユウの口から、溢れた白濁が筋になって流れていく。明王は荒い息を吐きながらユウの顔を手で拭った。
 見ていられない。有奈は胸を揉んでいたアキに寄り添い、キスを受け入れる。舌を絡めながら押し倒され、体勢を入れ換えて、肩にかかっているだけになったパジャマを脱いだ。露になった乳房がはじけるように揺れる。
「なんだよ、ヤル気満々じゃん? 妬いてンのかよ、おねーさま」
 アキが期待を込めて太腿を撫でた。秘部が疼き、今にも愛液が滴り落ちそうになっているのが分かる。
「お前だってどうせ夜までもたないんだろう」
 アキの股間をまさぐると、硬く勃起した熱芯が手に触れた。さっき放出したばかりなのに、ますます元気になったような気がする男根を手にして、有奈は熱い溜め息を吐く。
「ひゃっ、あ……ふぁあ……っ」
「ユウちゃん、こっちも成長してるなァ。トロトロで、指一本にすげぇ絡み付いてくるぜ?」
「っや、ぁ……め……っ」
 明王はユウを膝に乗せ、中指でまだ未熟さの残る秘部を掻き回していたが、弟に自ら跨がる有奈を見て、みるみる機嫌を損ねていった。始めは、傍観していてやろう、こちらも見せつけてやろうと思っていたのだが、嬉しそうなアキに両手でたわわな乳房をわしづかみにさせ、こちらへ向けた白く丸い尻を揺らしているのを見て、不機嫌な声を出さずにはいられなくなった。
「オイ、」
 ユウをひょいっと脇に下ろし立ち上がった明王が近付いてくるのを見て、アキがつまらなそうな顔をする。一歩遅れて状況を把握した有奈は、後ろから抱き締められて、逃げられなくなったことを知った。
「なぁ有奈ァ、風呂に入りたいだろ?」
 抱き締めたまま立たせられ、半ば強引に引っ張られる。
「チッ、なんだよ。良いとこだったのにー」
 むくれて呟くアキを残し、見送るユウのぽーっとした目と目が合う。しかし有奈は何も言えず、そのままパンツ一枚を身に付けた状態で連れて行かれた。





「……随分、気持ち良さそうにしてたなァ?」
「そっちこそ楽しそうだったじゃないか……」
 床に敷いた布団の上に寝転んだままのユウは、背を丸め腕で胸を隠すようにする。アキはベッドを下りて隣に座る。
「一人じゃつまんねーじゃん?」
 だがユウは口を閉じて、アキに背を向けてしまう。苛立ちながら、アキはその理由を考えた。
「なーに怒ってンだ。兄貴に可愛がられて喜んでたのは誰だよ?」
「……姉さんの胸を揉みまくってたのはどこのどいつだ」
 あぁ、とアキは理解する。
「デカいから良いって訳じゃねーよ。ユウちゃんがオレのこと放っとくからいけねーんだぜ」
「なっ、私は……あいつが勝手に……!」
 顔を上げたユウは、アキが尻に口付けるところをまじまじと見た。アキはそのままユウの足を掴んで広げさせ、恥部に舌を伸ばす。
 ユウは唇を噛んで堪える。だが呼吸のしかたすら忘れそうになる。甘い声を漏らしそうになって、慌てて手で口を覆った。アキの舌はゆっくりだが優しく、既に熱くなっていたユウを更にとろけさせていく。
「あ、はッ……、アキぃ……っ」
 上ずって震えた声が、静かな部屋に響いた。





 明王は一階に下りてバスルームの戸を開け、有奈を中に入れる。腰から下着を脱がそうと下ろすので、足を抜いて裸になった。
「……」
 黙ったまま、同じく裸になった明王がバスルームへ入ってくる。シャワーをひねりお湯を出しながら、ボディソープを手にとって、立たせたままの有奈の肩から塗りつけていく。
 さっきアキが思う存分揉んだ乳房、腰から尻、体の隅々を両手で手早く撫で回し、泡で覆っていく。
「オレも洗ってよ」
 明王は湯を張っていないバスタブの縁に腰掛けて待つ。有奈が近付くと、持ってきたスポンジは取り上げられた。
「手でもいいけど、もっといいやり方があンだろ?」
「……つくづく外道だな」
 泡を胸に塗られ、悪戯な笑みが圧力をかける。有奈は笑わないよう唇を下げながら、ゆっくりと膝を折った。なぜ笑みが浮かびかけたのかは、自分でも分からない。明王を屈させる機会を見つけたからだろう。
 腕から胸を通って腹へ、泡を塗った乳房で撫でるようにして洗っていく。くだらない遊びだと思いながら、明王をクタクタの虜にするつもりで精一杯体を使う。
「お望み通りか? 勿体ぶらずにさっさと希望を言ったらどうだ」
「ああ、そうだな。まだオネガイしたいコトがあるぜ」
 弱くだが頭を掴まれ、有奈は止まった。
「オッパイで挟むものと言えば? ここにあるよな」
 膝ではなく、その奥にあるもの。有奈は避けて通りたかった場所に、胸を近付けた。
「そうそう。やっぱお嬢様はお利口さんじゃねェか。これ、一度やってみたかったんだよなァ……」
 そう言う明王の勃起したペニスを泡だらけの谷間に挟み、上下させる。少しして、満足げな溜め息が聞こえた。
「あぁ……イイぜぇ、そのままそのデカパイでオレをイかせてくれよ?」
「……っ」
 有奈は尊大な男を睨みつけ、乳房を寄せて肉棒に擦りつけた。
「こんなことが楽しいのか?」
「ああ、楽しいぜェ。有奈のエロいオッパイを犯してるみたいで最高」
「さっさと出して終わらせろ」
 ぬるぬると泡が滑って、激しい刺激にはならないが、むしろ有奈はじわじわと攻めることで明王をやり込められると思っていた。思った通り、少しして明王が有奈の肩を掴み、腰を浮かせる。左右から寄せた乳房に擦り付けて、手やこんにゃくと同じような刺激が得られるのだろう。
「動くなよ」
 腰を速く動かし、すぐに射精される。顔に飛んだ精液も最初は嫌悪でしかなかったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
 シャワーで軽く体を流し、明王は出て行く。残された有奈は、半分は計画通りに行ったが、半分はやり返されたように感じた。このまま風呂場で犯すのかと思っていたが、明王は自分だけ達して行ってしまった。かすめた視線などから、明らかに意図的だと分かる。放置された体の熱は冷めるどころか、疼いてたまらない。これではまるで、あの卑劣漢のなす事すべてを求めているかのようで、屈辱だ。
 有奈はよくない考えを全て洗い流すようにシャワーで湯を浴び、明王が出ていった脱衣所へ戻った。着替えは持って来れなかったので、体にタオルを巻き付けて二階へ向かう。明王はまだキッチンの方に居るらしいが、どこで何をしていようと知ったことではない。
 部屋の前に来ると、中から可愛らしい嬌声が聞こえた。アキが動画でも観ているのかと思ったが、ドアを開けて目に入ったのは妹が騎乗位で自ら腰を振っている姿。
「ぁっ、ぁっ、んぁっ、きもち、いいっ、きもちぃっ……」
「ふはっ、ユウちゃんッ……んと、可愛いな、お前……ッヒャハハ、ああ! サイッコーだぜェ!!」
 呆然と立ち尽くす有奈にアキが途中で気付いたらしく、わざと笑ってみせた。振り向いたユウは驚くが、アキに両手で乳房を掴まれたこともあり、少しも腰の動きは変わらない。
「ね、姉さんっ……! あぁんッ、ち、違うんだっ……はひゃぁっ……これ、ぁ……っんぁあ!!」
 グリグリと突起をつまみ、アキはユウの顎を舌先で舐める。服は周囲に散らばっていて、なめらかな白い背が露わになり、大人の女性のようになまめかしい腰つきで、ユウはアキの上で乱れる。
「とま、止まらなっ……ねえさ、見て、のにぃ……ッ!!」
「ヒャハハ! 見られて余計に締めちゃってンじゃねェか! ……ンぉッ、たまンねェ、もうイクぜ……ッ!!」
 ラストスパートをかけて、アキが下から突き上げる。
「あ、やだ、やだぁっ……ひ、ィあ、ッぁあああああ」
 アキの頭を抱いてしがみつくように、ユウは全身をふるわせた。有奈は思わず生唾を呑んだ。白い太腿を伝うほど、愛液が溢れ出しているのが分かる。
 葛藤と戦う有奈の後ろから、明王が平然とした顔で入ってきた。くたりと寄りかかってくるユウを抱きとめ、アキが荒い呼吸を整えながら得意気に笑う。
「よぉ、兄貴……、オレら、さっき、シクナイ(シックスナインのアキ流の略)もしちゃったんだぜ」
「ほー、そりゃよかったなァ」
 気絶したユウを意気揚々と抱え上げ、風呂場へ連れていくアキを目で追い、呆れた様子だがどこか微笑ましげな明王はタンスから引っ張りだしたTシャツを着た。
「アハハ。んっとに可愛いなァ、ユウちゃん」
 廊下から、アキの声がする。
「腹減ったなァ~」
 明王は有奈の横を通って、部屋を出て行く。再び一人取り残された有奈は、体に巻いたタオルの端をギュッと握りしめた。
 とりあえず、明王が買った服に着替える。下着を着けてはみたものの、体の熱は収まらない。ベッドの上に座り、有奈は自ら足の間に手を差し入れた。
「っ……ふ……」
 待ち望んだ刺激が与えられ、廊下の音に耳を澄ましながらも一気に絶頂へ向かってしまう。
「んぁ……ぁぁ……っ」
 体の熱はとりあえず収まったが、屈辱感と欲求はかえって増したようだった。物足りない。求めているものはこれではない。
 確かめたくないことを確かめてしまって、自慰を恥じ、後悔しながら階下へ行くと、明王がいつものように卵を割っていた。こちらを見る前に、有奈は背を向ける。夜が勝負だ。





つづく








2016/05


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©2011 Koibiya/Kasui Hiduki